片平の仕事Katahira’s Works
私は、某県内を走る国道に関する設計の検討、資料の作成などを担当しています。その中で、バイパスが計画されていて、未着工となっている区間について、道路の予備設計を行いました。
バイパスは、かなり以前に計画が決まったのですが、長らく休止状態でした。今回の予備設計は、地元の方々から改めて聞いた要望をもとに考えたものです。現在、この設計をもとに担当の国道事務所と地元の方々で、着工を目指して協議を進めているところです。
バイパスは、すでに事業が決定されている計画済みのバイパスと接続することになっています。その手前にトンネルを設けるのですが、周辺には寺院や墓地、配水池などがあり、地元の人たちからは以下の3つの要望がありました。
私の課題は、平面線形、縦断線形、トンネルの断面、トンネルの工法などを総合的に検討して、地元の要望にあるように、周辺環境への影響をできるだけ抑えた道路構造を考えること。ただ、検討するといっても計画済みのバイパスとスムーズに接合し、工費もできるだけ抑えるなど条件が厳しい業務でした。
まず地元の要望を踏まえ、当初計画されていた平面線形のルートを図のように変更する案を検討しました。しかし、走行性が劣る上にかえって墓地への影響が大きくなってしまう。しかも、河川と町道の付け替えが必要なので余分な工費がかかり、配水池の下にトンネルを造ることになって、水が抜ける危険性も拭えません。これなら現行のルートのほうが妥当と判断しました。
一方、縦断線形はできるだけ下げて、トンネルの坑口を計画済みのバイパス側に延ばして、墓地への影響を最小限にしようと考えました。そのために検討した1案は、トンネル坑口の計画高を最大限下げて、坑口の位置を当初の計画より約10m延ばすもの。2つめの案は、道路を最急縦断勾配である5%で設計して、縦断線形を下げるもの。この場合、1案のほうがトンネルの延長距離が短く、その上で坑口位置を10m延ばすことができるので、こちらを採用することにしました。
ただ、坑口が延びて交差点に近くなると、ドライバーがどれほど手前で信号機を視認できるかが問題となります。ドライバーが信号機を視認できる距離が道路構造令で定められており、今回の場合は240m先の信号が視認できるか、車両及び信号機を縦断図に落とし込み、確認しました。
そして、もうひとつの大きな検討事項がトンネルの構造です。トンネル工法を選択する際、工期と経済性がカギとなりますが、この件では坑口周りの墓地に与え る影響も考慮が必要です。候補に挙げた工法は表の4つ。このうち、URUP工法とESA工法は業界において新技術、新工法で、URUPはシールド機械の製 作に時間が取られるものの、掘り始めると速いのが特徴のひとつです。また、施工ヤードが小さくできるので、墓地への影響も抑えられます。ただ、機械の製作などで費用がかさむ のが難点です。また、ESA工法はトンネル断面が矩型となるので、上部の墓地への影響が少ないのですが、こちらは工期が長いので費用がかかる。現場打ち施 工もESA工法と同様のメリット、デメリットがあり、結果的に工程、経済性にすぐれたNATM工法を採用しました。
トンネルの坑口付近には、地元の人たちが生活道路として利用している町道寺林道線があ り、墓地や寺院に影響を与えない付替道路の計画が必要となります。バイパスの左右に付替案を考えましたが、採用となったのはB案。本線の設計案ができ上が り、その上部空間を有効利用すればよいのではと思いついて、発案したものです。
坑口の手前に明かり巻きボックスを設け、そこから上るように付替道路を取り付けます。ほぼ地形改変がなく、走りやすいプランとなったと自負しており、地元の人たちに受け入れてもらえるといいと願っています。
今回は、厳しい条件のもと考えられる計画を数点立案して、できるだけ理路整然と検討を進めて、最適な計画を提案しようと努めました。トンネルの工法では新しい2つの工法を立案しましたが、自分自身まだ理解が足りず、協会やゼネコンの方々に相談しながら進めたので時間がかかったのが反省点です。
こうして社会資本の整備に関わっている技術者であることに幸せを感じ、我が国の安全・安心の確保を第一に、これからも仕事に取り組んでいきたいと思います。
学生時代は構造力学に関する教育プログラムについて研究。
1996年 道路設計部・地質トンネル部 各種道路及びトンネル設計を担当
2003年 (財)高速道路技術センター・トンネル研究課に出向。トンネル委員会業務を担当
2007年 技術管理部 新東名高速道路の施工管理に従事
2012年 道路交通部 道路設計を担当
2013年 技術管理部 常磐自動車道の施工管理に従事
2014年 道路交通部 道路設計を担当