株式会社 片平新日本技研

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片平の仕事Katahira’s Works

ラーメン式橋台に生じた損傷の詳細調査および補修設計

釜石自動車道に架かる橋梁の損傷部に対して行った損傷原因の究明
および補修設計について

該当橋梁の構造形式は単純PCプレテンションT桁、桁下高が最大16mあり、両橋台はラーメン式橋台、竣工から約10年(平成21年竣工/補修歴なし)を経ていました。

橋梁の外観写真

損傷状況と原因の検討

打側壁打継ぎ部にコールドジョイントが原因とみられる水平ひび割れ(A1・A2橋台両側面)があり、錆汁を伴う漏水の跡があります。

この漏水の原因の一つは背面盛土からの水で、これが漏水に至らせたと考えました。A2橋台裏の法面が崩壊しており(写真)、これは既設排水工からオーバーフローした水が盛土内にあり、そこから橋台側に流入した水が、橋台側壁の控壁に妨げられて排水されず、水平ひび割れから漏水に至ったと推測しました。

漏水の二つ目の原因としては、橋面に排水性舗装が施されているため、舗装の浸透水が端部導水帯の経路のどこかから浸透している事も考えられました。

次に、錆汁の原因についてです。

一つは内部鉄筋の腐食によるもの。もう一つは、裏込土が鉄分を含んでおり、それが流出したことが考えられました。いずれにしても、鉄筋の腐食が推測されるため、損傷状況の詳細調査実施を提案しました。

詳細調査の実施内容

詳細調査は、錆汁、漏水、周辺環境について以下の4点を行いました。

  1. 鉄筋腐食度調査
  2. コンクリート中性化試験
  3. 橋台に水抜きパイプを設置
  4. 川水質のpH値調査

01. 鉄筋腐食度調査

コア抜き(φ100)をして近接目視での検証を実施しました。内部鉄筋は軽微な腐食のみ、削孔コアも内部はあまり汚れておらず、概ね健全な状態でした。

A1・A2調査箇所いずれも軽微な腐食のみ。一部変色箇所は錆汁が外部に出てきてから変色したものとみられる。

02. コンクリート中性化試験

次に、コア抜きした①の穴にフェノールフタレイン(PP)溶液を噴霧し確認したところ、A1・A2調査箇所いずれも赤紫色(pH値12以上)に着色(アルカリ性)しコンクリートは概ね健全でした。

※コンクリートのpH値は12~13。

03. 橋台に水抜きパイプを設置

簡易対策として、水抜きパイプ(φ50)を設置しました。削孔箇所からの排水量が多いものと想定しましたが、A1・A2設置箇所いずれも少ない排水量でした。

04. 川水質のpH値調査

交差する河川水のpH値調査を行いました。
結果、pH値は7.64(中性)であり、河川水は劣化要因ではないことがわかりました。

調査結果

本調査の結果、内部鉄筋とコンクリートは健全であるにも関わらず漏水はあるため、コンクリートと鉄筋を予防保全として補修する必要がありました。
次に、設置した水抜パイプとひび割れからの漏水量が違っていたことから、側壁背面を伝って漏水している可能性に着目しました。
また、最大5mm幅のひび割れが見られ、そこから漏水しているため、このひび割れは補修(止水)する必要がありました。

補修設計の提案

調査の結果、以下3点の補修方針を提案することにしました。

  1. 水平ひび割れ部はひび割れ注入による止水を実施
  2. 防錆効果のあるひび割れ注入材を選定橋台に水抜きパイプを設置
  3. 予防保全としてコンクリートの表面保護を提案

補修設計案として
①②のひび割れ注入は、スーパーロック工法を提案しました。これは、注入厚可変で、ひび割れ幅5mmでも対応可能なものです。注入材は強アルカリで防錆効果があり、今回のような例には最適なものです。
③表面保護工は、漏水に対する予備対策として剥落防止コーティング・水切り材設置の2つを実施してコンクリート表面を保護して、水をシャットアウトし、凍害抑制を図るものです。

今回は、詳細調査を行っても損傷原因の特定が難しい面があることから、現状は予防保全の観点での止水対策となっています。今後の経過観察の重要性も合わせて提案しました。

リポーター

小林 隼(2017年入社)
橋梁点検・構造物設計の仕事を経て、片平新日本技研に入社しました。車、バイク、野球観戦、ロックバンドが好きです。(バンド活動してます笑)